Special Feature
東京で「和」を感じる
至高のホテル5選

大手町の旅館、禅の静寂が広がる大空間、昭和の息吹を伝える文化財、そして都会の中に佇む日本庭園——。東京には、「和」の美意識をホテルというかたちで体験できる、特別な場所があります。
今回の特集では、建築・アメニティ・温泉・食の四つの視点から「和」を徹底的に追求した5つのホテルをご紹介します。それぞれがまったく異なるアプローチで「日本らしさ」を表現しており、どのホテルを選ぶかは、あなたがどんな「和」の時間を過ごしたいかで変わってきます。
01東京における「和」の再定義
かつて東京で「和」を感じるには、郊外の旅館まで足を運ぶしかありませんでした。 しかし近年、都心のホテルが建築・素材・所作・食のすべてに和の精神を取り入れ、 滞在そのものをひとつの文化体験へと昇華させる動きが広がっています。
今回の5軒に共通するのは、「和室を用意した」という表面的な対応ではなく、 ホテル全体の空間づくりのなかに「和」を根付かせているということ。 靴を脱ぐという何気ない動作から始まる滞在の設計、 宮大工が手掛けた風呂桶、百段の文化財階段、隈研吾の格子—— いずれも「なぜここに和があるのか」を問い直した場所です。
02星のや東京:大手町に現れた「塔の日本旅館」
東京の経済の中心地・大手町に、地上17階のビルまるごとひとつの旅館として設計された「塔の日本旅館」があります。 外壁を彩る江戸小紋・麻の葉模様の金属スクリーンは、 夜になると内側の光がほのかに滲み出し、通りに繊細な光と影の模様を落とします。
足を踏み入れると、青森ヒバの一枚板の扉が都会の喧騒と館内の静けさをきっぱりと分かつ「結界」として出迎えます。 玄関で靴を脱いだ瞬間から、エレベーター・廊下・客室にいたるまで、館内のすべてが畳敷きという非日常へ。 この「靴を脱ぐ」というさりげない身体的な行為が、心をすっとリセットしてくれます。
17階には地下1,500メートルから湧出する「大手町温泉」(強食塩泉)を引いた大浴場があります。 内湯から続く露天風呂は天井が吹き抜けになっており、都心の夜空を見上げながらゆっくりと湯につかることができます。
お茶の間ラウンジでは就寝前に季節のノンカフェインドリンクが提供されます。 各フロアがひとつの小旅館のように機能しており、浴衣のままラウンジでくつろげるのが、いかにも「星のや」らしい体験です。
03アマン東京:ケリー・ヒルが紡いだ「禅」と「間」の世界
大手町タワーの最上層に位置するアマン東京は、建築家ケリー・ヒルが手がけたアマン初の都市型ホテルです。 33階のロビーに足を踏み入れると、高さ30メートルの吹き抜けが目の前に広がります。 天井一面に張り巡らされた和紙ガラスが外の光をやさしく拡散し、空間全体がひとつの巨大な行灯のような佇まいを見せます。
客室には玄武岩・和紙・タモ材といった日本の自然素材がふんだんに使われています。 バスルームには日本の入浴文化への深い敬意が込められており、正方形の石造り深浴槽に加え、宮大工が伊勢神宮の木で丁寧に仕上げた椅子と桶が置かれています。
スパ施設には東京最大級の30mプール(皇居外苑の森を一望)と日本式大浴場を完備。 ダイニングでは「武蔵 by アマン」が本格的な江戸前鮨を提供し、滞在をより豊かなものにしてくれます。
「縁側」の概念を廊下やパブリックエリアに取り込んだ設計が印象的です。 宿泊客の要望を先読みする「アマン・マジック」と、日本古来の「おもてなし」の精神が自然に溶け合ったサービスは、世界中にリピーターを生み続けています。
04ホテル雅叙園東京:昭和の竜宮城が息づく、美術館のようなホテル
再開時期は公式サイトをご確認ください。
1928年創業の高級料亭「目黒雅叙園」を源流に持つホテル雅叙園東京は、 「ミュージアムホテル」という唯一無二の存在感を放っています。 館内のいたるところに残る彩色木彫り・螺鈿細工・天井画は、 一歩ごとに日本の工芸技術の粋を肌で感じさせてくれます。
その象徴が、東京都指定有形文化財「百段階段」。99段の階段でつながれた7つの部屋の 天井や欄間には、当時の著名な画家たちの傑作が描かれています。 季節ごとの展覧会「和のあかり」などで一般公開もされており、宿泊者は滞在中いつでも自由に鑑賞できます。
全60室すべてが80㎡以上のスイートルームで、アメニティにはフランスの「オムニサンス・パリ」を採用。客室には急須・お茶セット、そして折ると羽に美術品が現れるホテルオリジナルの折り紙も用意されています。 ドライヤーには復元ドライヤーを採用するなど、細部へのこだわりも際立ちます。
夏季限定の浴衣プランは「ただの宿泊を超えた体験」として人気を集めています。 250種類の中から選んだ浴衣・帯・下駄・巾着をそのまま持ち帰れるのは、他ではなかなか味わえない特別な魅力です。
05高輪 花香路:都会の森に佇む、16室だけの隠れ家旅館

グランドプリンスホテル高輪の別棟として、約2万㎡の広大な日本庭園の中に静かに佇む高輪 花香路。 わずか全16室という贅沢な空間で、品川エリアならではの都心へのアクセスの良さと、 旅館ならではの濃密なおもてなしを見事に両立させた「ホテル・イン・ホテル」の成功例です。
チェックインは、着物姿のスタッフが出迎える専用ラウンジ「茶寮 花庵」から始まります。 冷たい緑茶と和菓子のウェルカムドリンクでほっとひと息ついたら、 17:00〜19:00のカクテルタイムには穴子や海老の手まり寿司、ローストビーフが振る舞われます。 近隣施設を含めた計4つのラウンジを「ラウンジホッピング」で楽しめるのも、ここならではの過ごし方です。
アメニティにはポーラの最高峰ライン「POLA B.A.」のスキンケアセットを採用。 近隣施設のドライサウナ&ミストサウナも朝7:00〜夜22:30まで無料で利用できます。
06ザ・キャピトルホテル東急:魯山人の美意識が宿る、「和モダン」の極致

永田町・赤坂エリアに建つキャピトルホテル東急は、かつて稀代の美食家・北大路魯山人が 主宰した会員制料亭「星岡茶寮」があった場所に立ちます。 建築を手がけたのは隈研吾。障子・襖・格子といった伝統的な意匠を現代の感性で昇華させ、 「和モダン」の極致ともいえる空間を作り上げました。
全251室すべてが44.8㎡以上という広さを誇り、大きな窓からは 国会議事堂をはじめとする東京のパノラマが広がります。 地下鉄駅直結という便利な立地でありながら、館内に一歩入れば静謐な別世界が広がります。
食体験の核となるのは日本料理「水簾」。水庭を眺めながら懐石・寿司・天麩羅・鉄板焼を堪能できる、 いわば「和食の総合百貨店」のような存在です。クラブフロア宿泊者向けの専用ラウンジ「SaRyoh」では、 赤坂の景色を眺めながら時間帯に合わせた軽食とドリンクを楽しめます。
07まとめ:5ホテルを比べてみると
5軒はいずれも「和」をテーマに掲げながら、そのアプローチはまったく異なります。 どのホテルを選ぶかは、自分がどんな「和」の時間を求めるかで自然と決まってくるはずです。
| ホテル | 和のスタイル | こんな人に |
|---|---|---|
| 星のや東京 | 垂直展開された旅館・畳・大手町温泉 | 文化体験(剣術・茶道・舟遊び)を楽しみたい |
| アマン東京 | 禅・ミニマリズム・行灯ロビー・石造り浴槽 | 引き算の美学・究極の静寂を求める |
| ホテル雅叙園東京 | 装飾美・文化財・螺鈿・天井画 | 日本の工芸美・アート体験を重視する |
| 高輪 花香路 | 日本庭園・旅館おもてなし・着物スタッフ | 少人数の隠れ家感・美容ケアも大切にしたい |
| キャピトル東急 | 隈研吾の格子・魯山人の美食の系譜 | 食(水簾)・ビジネス・利便性を重視する |
同じ「和」というテーマでも、5軒の個性はこれだけ違います。 比較表を眺めながら、自分が惹かれる一軒をじっくり探してみてください。
5軒を調べていて改めて驚いたのは、それぞれが全く別の「和」を追求しているということ。 星のやは「靴を脱ぐ」という行為から滞在を設計し、アマンは30mの空間で静寂を生み出し、 雅叙園は百段の文化財を日常として使わせてくれる——。 「和」というひとつの言葉の奥に、これだけ異なる哲学が宿っているのが、いかにも東京らしいなと感じました。